ログミー編集部の福岡です。こんにちは!

ログミーは「全文書き起こしメディア」ということもあり、多くの書き起こしライターさんたちの協力をいただきながら日々コンテンツを発信しております。

実は私、今よりもまだまだ駆け出し編集ライターだったころ、本業+αとして書き起こし(テープ起こし)の仕事もやっていました。

それもあり、私はわりと書き起こし業務は好きなのですが…。書き起こしというと、ほとんどの人が「作業が大変」「時間がかかるから苦手」と言われてしまったりするんですね。

確かに、派手ではないし、むしろ地味ですが…。実際にやってみないとわからない魅力だってあります!

とはいえ、私1人が書き起こしの魅力を語ったところで説得力がありません。そこで今回は、ブラインドライターとして活躍されている松田昌美さんに、書き起こしの魅力をうかがってみました!

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松田昌美(まつだ・まさみ)・・・「テープ起こし」専門ライター。視覚に障がいがあるが、優れた聴力を持っている。そのため、音声データを倍速再生でも聞き取れる&書き起こすといったことも可能。

「書き起こしが仕事になるとは思っていなかった」

――こんにちは!

こんにちは!

――さっそくですが、松田さんが書き起こしの仕事を始めたきっかけについてうかがいたいです。確か、ご自身も読者モデルとして参加されているCo-Co Life☆女子部のスタッフから声をかけてもらったのが始まりだったんですよね?

そうなんです。最初は『Co-Co Life☆女子部』のお手伝いとしてスタートしました。ある日、スタッフの方から「書き起こしの技術が高いから、これで仕事をしてみたらどう?」って言われたんです。

――「書き起こしの技術が高い」というのは、以前からやったことがあったとか?

書き起こしは、盲学校の自立支援みたいなものの一環としてやっていたんです。でも、当時はかじり程度でしたし「つまらないことをさせるなぁ」と不真面目でした(笑)。授業を受けているふりをして、サファリで好きな有名人を検索したりして(笑)。

――(笑)。

まさか大人になってから仕事になるとは思わなかったですね(笑)。それまでは不真面目にやっていたので、いざ仕事として始めようと思ってもなかなかできませんでした。なので、好きな音楽の歌詞を正確に打つといった練習をしていました。


視覚情報と聴覚情報の溝

――いつもどうやって書き起こしの仕事をしているんですか?

私の場合は視覚に障がいがあることが前提です。なので、基本的にパソコン操作では音声読み上げソフトを使っています。マウスが動いたら、その位置を音声で知らせる。文字が変換されたら、その詳細を音声で知らせる…みたいなものですね。

あと、ALTキーと矢印キーですべて操作できるようにしています。視力の状態にもよりますが、マウスの位置を追いかけられないんですよね。だから、ボタン操作できるようにしているんです。

さらにいうと、パソコンはWindowsとMacの2台使いです。でも、Windowsの画面は真っ黒にしていて、何も映しません。ディスプレイの光が強すぎて作業の邪魔になるので、あえて真っ黒にしているんです。

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――では、Macは?

Macでは、言葉の意味などを調べる時に使っています。パソコンが1台でも書き起こしはできますが、同時に言葉の意味などを調べているとブラウザをたくさん開くことになって、これもまた作業の妨げになってしまいますので。

――ちなみに、どういったスタイルでお仕事をされているんですか?

私の場合は、健常な人とタッグを組んで書き起こしをしていますね。

くわしく話すと、私が書き起こしたものを、その人たちにチェックしてもらうんです。


――誤字脱字チェックみたいなもの?

私は視力が弱いこともあり、文字を読み書きしてきた時間が短いんです。これまで耳から入ってきた情報を頼りに生きてきたわけなので、普通の人に比べて語彙力があるわけじゃないんですよ。

たとえば、カバンって「バッグ」と書きますよね。でも、私からするとほとんどの人が「バック」と言っている認識です。なので、カバン=バックだったんですよ。

――正しい言葉と、実際に話されている言葉が一致しない?

そうです。そのまま書き起こすと「バック」になる。それをチェックしてもらうわけですね。

――チェックの段階で、初めて表面化するわけですね。

チェックしてくれる人たちからすると「違うでしょ、ここはバッグでしょ」となる。でも、私からすると「だって、バックって話しているから」となる。

視覚情報と聴覚情報の溝はいつも埋まらない…。ときどき凹むこともあります。


2〜3倍速での書き起こしができる

――以前、松田さんが受けていたインタビュー記事で、再生速度が2倍、3倍でも書き起こしができると話していてすごく驚きました。

視力の代わりに聴力が高いおかげで、2〜3倍速での書き起こしができるんです。正直、もうちょっと速度を上げても書き起こせるんじゃないかと思っているんですが(笑)。

あと、音だけで部屋の広さもだいたいわかりますし、話していない人も含めてその場に何人いるかもわかります。素直に、ただ書き起こそうと思えば、音から無限に情報を拾えるんです。


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でも、ただ書き起こしただけでは読める文章にならないじゃないですか。そのあたりを考えないといけないですよね。

――聴力が高いから、空気丸ごと文字に起こせるんですね。

書き起こしを始めたばかりのころ、言葉を拾いすぎて注意されたこともありました(笑)。

私は音の世界を生きているので、それをそのまま文章にできます。

とはいえ、「そのまますべて書き起こして」といった依頼は受けたことはありませんが(笑)。


書き起こしの魅力は「時間を忘れるほどのトリップ感」

私、この仕事が楽しいと思う理由の1つが、本や参考書では知り得ない世界を知ることができるからなんです。だからいつも新鮮な気持ちになれるんですよね。

――わかる気がします。あと、書き起こしで集中力が高まっている時、小説の世界にどっぷり浸かっている気持ちになったりしませんか?

それ、ありますね。その場にいないんですけど、取材の場に同席している気持ちになる。

あと、集中力が高まると時間が経っていることにも気づけなかったり。


――でも、そのトリップ感に至るまでがなかなか難しかったりしますよね。松田さんが集中力を高めるために工夫していることがあれば聞きたいです!

あまりないですが…。ただ、仕事だと思わないようにしています。

「仕事だからやらなきゃ」となると、義務感が強くなって嫌になっちゃう。そして、書き起こしている内容に入り込めなくなる。


――入り込めないのは辛いですね…。

ね…。私も福岡さんも人間だから「つまらない」となることってありますよね。内容が難しかったり、聞き馴染みがない言葉が多くても疲れちゃうし。

書き起こしって、一つひとつのコンディションの噛み合わせな気がしています。「お腹が空いた」「眠い」となったら、ちゃんと書き起こせない。

実は、すごく些細なことが苦労に繋がっちゃう仕事なのかなとも思っています。


――もし集中力が途切れたら、どうしていますか?

私はもう、粘らない。疲れたと思ったら散歩に出かけたり、いっそ寝ちゃったりしますね。だらだらと仕事しない。そのほうが効率もいいと気づいたんです。

もちろん、仕事の続きも気になりますが。眠いのを我慢しながら手を動かしても内容が頭に入ってこないし進みません。だったらもう、寝ちゃったほうがいい。

――機械的にやればいいわけじゃない?

私の場合、話している人の立場にならないと書き起こせないタイプなんです。書き起こしって、奥が深いですよね。

書き起こしとは、人の声や感情を扱う仕事

――松田さんが書き起こしの仕事に関して「こうしていきたい」とういものがあれば、うかがいたいです!

気になっていることは…AIですね。

――AI?

今、そういった技術が急激に進歩しているじゃないですか。その中で「単純作業は機械がやるようになる」と言われていますよね。書き起こしの仕事も、その「単純作業」に含まれていたりします。

AIのほうが、きっと書き起こしのスピードも速い。人間のように疲れないから、大量に書き起こせるようになると思うんです。

――となると、勝ち目がない…。

書き起こしを単純作業ととらえるなら、AIに負けてしまうと思います。

でも私は、書き起こしは人の声を扱う仕事だと思っています。同時に、話している人の感情を拾う仕事でもあると思っているんです。

ただ書き起こすだけじゃないから難しい。一方で、すごく素敵な仕事だと思っているんです。

社会人になって日々過ごす中で、時間をかけて人の声を聞くことなんてなかなかないじゃないですか。それこそ、要点を絞って聞くようにしたりしますし。

あえて人の感情に触れる仕事ができることは、私はとてもうれしいんです。だから、人間じゃないと拾えない感情を起こし続けるという意味で、私はAIに負けたくないですね。




シンプルだからこそ、奥が深すぎる「書き起こし」。

作業としては確かに地道ですし地味ですけれど、関わっている人にしかわからない世界があったりするんですよね。

松田さんのインタビューが楽しすぎて、正直まだまだ書ける内容があるのですが文字数的にもそろそろ限界なので、残念ながらここらへんで切り上げたいと思います。

それではまた!

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