ログミー代表の川原崎です。こんにちは!

ログミーは「全文書き起こし記事」だけを掲載するというちょっと変わったメディアなのですが、ログミーがあることによって、間接的に世の中に良い記事が増えるのではないかと思っています。そのことについて書いてみます。

人が60分しゃべると2万文字になる

たとえば、ある著名な文化人の講演会があったとします。講演時間は120分です。

人が60分話したものをそのまま書き起こすと、平均的に約20,000文字になります。従って、120分の講演をすべて書き起こすと約40,000字の原稿になるのです。

しかし一般的なメディアの場合、この講演を実際に取材して記事化すると、原稿の文字数は数百文字〜せいぜい2,000文字程度になります。

なぜ文字量が減るのか?

この、40,000字を10分の1以下の文量に減らす間に「編集」と呼ばれる作業が行われているのですが、具体的にどういったことをやっているのでしょうか?

  • テーマを決め、それに対して不要もしくは優先順位が低いと思われる部分を削る
  • 読みやすいように時系列を入れ替える(実際に話した順序とは別のものにする)
  • この分野の専門家などのコメントをとり、加筆する
  • 自分の考察や分析、感想を加筆する

このように、編集者や記者が元々の素材を削ったり、新たな素材を加えたり、組み替えたりして、記事へと仕上げていくわけですね。

つまり編集行為というのは、ただの情報に過ぎないもの、そのままだと吸収しづらかったり過不足があったりするものを、人の手を介することによってより良いコンテンツへとつくりかえ、読者に届ける行為であると言えます。


全文書き起こしとは「編集しない」こと

それに対し、ログミーがやっている「全文書き起こし」とは「編集しないこと」と言えるかもしれません。

スピーチや講演といった素材の良さ、スピーカーが伝えたかったことを、全文書き起こしによってできる限りそのまま伝える、というのが我々がやろうとしていることです。

「できる限り」と書いたのは、ただ話したことを一字一句そのまま素起こしして公開しているわけではないからです。

人間は、そんなにうまくしゃべれません。

実際に素起こしの原稿を見ると、「えー」「あー」といった"ケバ"と呼ばれる意味のない声が入っていたり、いつまでも一文が終わらなかったり(句点「。」を打つ位置がない)、主語や目的語が消えていて何の話をしているのかわからなかったり、一文中で同じことを繰り返し話していたり、ロジックが破綻していたり、文章がねじれていたり、日付や金額を間違えていたり、耳障りな口癖が繰り返されていたり、etcetc...

よっぽどきちんとしたスピーチの訓練を受けていたり、完璧な原稿を用意して何度も練習していたり、といった特殊なケースを除いては、ただ書き起こされただけの原稿は想像以上に「とても読めたものじゃない」のです。

パネルディスカッションやトークショーといった、原稿なしのライブで話さなければいけない場合はさらに大変です。リップサービスで誰かの悪口を言ってしまったり、口を滑らせて言っちゃいけない重要な情報を漏らしてしまったり……。

実際、私が自分で登壇したイベントの書き起こしを読むと、「自分はこんなにしゃべるのがヘタだったのか……」と心底凹みますし、取材先の方に整文前の素起こし原稿を見せると、たいていショックを受けます(笑)。

ログミーでは、言ってもいないことを付け加えたり、言ったことを丸ごと言わなかったことにしたり、時系列を入れ替えたり、といったことはしませんが、登壇者が「本来伝えたかったこと」がきちんと伝わるように、文章を読みやすく直してから公開しています(政治家の発言や記者会見など公共性・報道性が高く、原文が重視されるものは別です)。

つまり我々が目指しているのは、元々100点の価値があるコンテンツを110点とか120点にすることです。


編集者は200点のコンテンツを目指すべき

私は、編集行為というのは、元々100点の価値があるコンテンツを150点、できれば200点にするためのものだと考えています。

厳しい言い方になりますが、50点や80点のコンテンツしか作れないのであれば、そこに人が介在している意味がないどころか、世の中や読者にとって不利益を及ぼしていることになります。

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しかし実際には、同じイベントを取材したメディアの編集記事よりも、ログミーの全文書き起こしのほうがたくさん読まれる、という現象が起こっています。

ただの書き起こしよりもおもしろい記事をつくる、というのは、思ったよりもけっこう難しいことなのかもしれません。


ログミーがあると世の中に良いコンテンツが増える

自分がつくった記事よりもただの書き起こしのほうが読まれる、価値が高い、という状況があると、「書き起こしよりも読まれる良い記事をつくろう」というインセンティブが編集者に対して働くんじゃないかなと思っています。

追加取材をしたり、識者のコメントをとったり、独自のネットワークから関連情報を仕入れたり、企画を考えたり。

そういった、人間にしかできない創造的な"編集"をすることによって、150点のコンテンツや200点のコンテンツが世の中に増えるといいなと思っています。


※ログミーでは、このビジョンに共感していっしょに走ってくれる仲間を絶賛募集中です。ぜひオフィスに遊びに来てください。